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十一月

君には君に射す陽があってなにもかも許せるだろう雲はける空

あきらかな夏の光を無くしたる枝かたくして古き葉おとす

終わりから始まる記憶 枝先に降り積む雪はそれを美化して

ワイパーに雪の溜まりは除かれて扇の中に照る空ありき
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八月

このうちのあなたはどれかと問われたる保険証預け耳鼻科に座る

ヘッドホン装着ののち音を待つ聴力検査に長く待つ音

三号被保険者なりしこの夕べ人の名のつく病名付さる

大通りはずして歩く石段の翳りの中に黄の花ゆれる

職持たぬ午後の長さは投薬後夢を見ぬほど寝てもあまりぬ

水の上を魚がはねて引き継ぎに漏れいしひとつメールに言えり

人の手にハガネが動き川岸に小さく咲ける草は刈られつ

水に浸す夏の素足の感覚の読後のなかに夫と子待たむ

浴槽に放した四肢を引き寄せる胎児のかたち深く沈めり

この先も働きにゆく寝顔あり夕日のような微光を放つ

テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

六月

弁護士の「うそつきが勝つこともある」の言葉の先が雨に紛れつ

反則を犯した者が手を挙げる部活の写真の吾は肥えていし

ハンモックのかたちに浮ける赤い月呼び出して話し疲れてみたき

近況を少し知りたる友おもう手のひら既にスマホ乗せたる

旧姓に戻りたる友 爪に花光らせてあり蜜バチも飛ぶ

はしゃぎ過ぎし吾のうしろ影傾かず歩道をゆかな楡に入るまで

添い星のような野萵苣に触れぬ水 海に落ちゆく陽を追い流る

わたくしに入れる保険のなきことを早口の外交員に言う

売られゆくラブラドールを見ていたり水際走る想のみにして

髪切れば過去でも未来でもなきが向こうにあらんそのドア開ける




テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

五月

毎夕にボール追う犬来ぬなれば風吹き渡る冷きグランド

雨打つとき花香るとき焦がれるということむかし確かありにき

あかねさす二十八星は雨風が過ぎた網戸の裾に来ていし

風車まわらぬほどの風となり二十八星のいないベランダ

薄青の山のふもとに光る街そのひとところクリーム泡立つ

夫はまたひとり荷持をつめた朝物音立てずアメリカへ発つ

筋力をつけよと子の言うトレーニングふたつ終えたり芋も煮えたり

風に揺れるシャツ取り込んでいつか子がいなくなる日のひとつ暮れゆく

ああ鳴けばこう鳴く鳥がいる空をあしたは夫が降りて帰らむ

「うんいいよ」っておとこが応える婚約はどうかと思いて子に肉食わす

テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

四月

まぶた越しの薄いひかり ほつほつと田舎の朝が吾に近づく

木漏れ日がまだやわらかに届きたる枇杷の実越しのアンクレットに

外郎の白を選んでいつからか「わたし」と母は言っていたんだ

祖父のとなりに祖母の眠れる坂の上ひょうひょうと菜の花が咲くなり

「さよなら」と言わない町に生まれしは「帰って来るわ」と言いてわかれる

美馬商店を右に曲がればもう母の生家は見えず枇杷の葉しげる

この次の話はしない母と立つ定期航路に白線引かる

じりじりと時間が吾にかぶさってうつ向く母の横に立つのみ

夜の海の船に寄せ来る波音がきのうとあすを曖昧にして

終わったことばかり思えり誰宛というわけでない日記をつけて

テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

三月二十七日

瞼越しの薄い光に目ざめたる髪の先から花の匂える

母と吾おなじ匂いがしたはずのおそらくちがう今を生きなむ

増えつづける枝葉のごとき少年の問いに応えて鉄橋わたる

テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

三月

病気の子産みしおまえの母は恥と言われて子はあの街捨てにき

いつか海に辿り着く道横切ってあなたの場所は山裾にある

西日射す君の殻なる六畳のドアにこぶしの形(かた)も捺されて

からっ風に自転車漕げばまなこから溢るるものあり叫びたくあり

朝の光に声轟けば浪人は寝ぐせのままにぬうと出で来ぬ

校名にふくらみをもつ封受くる子は局員に何度も礼して

今年五度目の書き止め配達局員は円顔だったと今更知りし

静かなるくじらの如くうつぶせて『今日から俺は』の二巻に子は入る(いる)

大きお世話くちにしかけてのほほんと陽の射す桃を匂いていたり

浪人でありし子の日々は吾もまた浪人に在りし四角い部屋に



テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

三月三日

いつか海にたどり着く道横切ってわたしの場所は山裾にある

山と山かさなるところに朱が入りてこれからひとつ謝りにいく

テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

二月

持ち越しの秘書類しどろに積むままに新た日めくり風にそよげり

雨上がりのひかる道なお光らせて入学試験へ自転車がゆく

大学の中退理由は真っ直ぐに言って来ればいい 寒椿咲く

花いちりん胸に挿すごと帰り来よ圧迫面接受けし青年

健闘を祈りてくれる不合格通知は細きためいきに飛ぶ

幾分か補欠通知に厚みあり「ビミョー」と子らは口揃えたり

粉雪の舞い上がり舞う儚さの夕べを超ゆる脚のしびれて

日輪に溶けだす雲さえ愛おしい 輝くものは影をつくりぬ

四則演算できれば良しと面接に言われし吾のむかしはむかし

どんな過去からおちてきたのかマカデミアナッツを噛みてやまず歩かず



テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

十二月

低い山抱くように尾根が窓にあるその距離までの吾の視野なり

みるたびに伸びきったゴムみたいな顔 去年の顔が思い出せない

書き出しを襲う憎悪は月光が滲み出すときつかの間ゆるむ

「ちいさな白い花が咲いたよ」それだけが長い電話ののちを残れる

床としてここに過ごせる鬼胡桃素肌のごとく蜜引き入れる

かなしかった夢のつづきはもうなくて初めの一歩が毎朝にある

父母老いてまっすぐ伸びる黒髪の吾を知るもの夫のみとなる

むしろ泣けることの幸せ言わなくちゃ今年の初冬も澄みたる匂い

訴えることの悲しさを日暮れまで走らせていたペンに蓋する

いくつもの真珠が卓に光るよう置きたる眼鏡を通す電光

テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

十一月

立ちあがる力が欲しい向き合うもの山しかなくて山に問いたり

わたしはここよ 具体的には言えなくて「かなしい」とだけノートに記す

説明がつかぬとあらば光るだけ光らせている携帯電話

分け合いて眠りを誘う酒だから突然泣くのは反則だろう

火災報知機みじかく鳴りし外界に頭わずか傾き『海雨』に戻す

開いたら六十頁がいつも来てしばらくを居て「Ⅰ」へと帰す

読み終えた後の表紙にこの夜は光るペガサス居りペガサスと寝む

テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

今日の歌

Uの字に押される川の夜の更けをイオンモールが白く照らせり

今月の歌

キッチンへ行きかねる陽射し熱帯夜の体育館の程になきこと

いそぎんちとゃくのごときジャスミンしとしとと三角コーナーで甘く匂えり

骨と花ともにして捨てなにかしらほろ苦きもの突きあげてくる

ふり向けば散髪した子が模試結果持ちて立ちおり 濡れた手を拭く

おとこなら泣くなと育ちずんぐりと顎関節も育ちてきたり

ある日には巴里かとおもう街並みの巴里は知らねどこの窓が好き

近づきて遠のける山は若き日の標のようだと言うに至らず

ひとつぶの安定剤を服みしのち薄日を帯びた吾がほんもの

水に浸す牛蒡のように小一時間眠りしのちの髪をゆわえる

ここまでとして閉じるだろう『山鳩集』おまけのような朝くるなら

テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

今日の歌

竹糖のありしところにアスファルト敷かれておりてびっしりと道

テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

今日の歌

暗がりに「朝はちゃんと来るか」って聞けば夫の目と眉に間が開く


雨が降る夜であれど夜は立ちあがる陽のためにあるなんて言わせる

テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

今日の歌

ここまでとして閉じるだろう『山鳩集』おまけのような朝くるなら

テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

今日の歌

つながれた猫どうしようもなく寝ておりてアベリア前に人来るまでを



ちょっと前に詠んだ歌があまり良くなかったので手を加えました。
言いっぱなしはあまり好きではないんだけども、この歌に限っては
なんとなくこうしたかった。

テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

今日の歌

ひとつぶの安定剤の試みに薄日を帯びた吾が本物

テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

今日の歌

夫とゆくスーパーまでをたそがれる郷ひろみ(ヒロミ)が居りて肩を並べる

引き寄せるその厚き手に守られて夫の前には飛び出す幼女




テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

今日の歌

雨あがりに夫が呼ぶから覗き見た青コンテナで郷ひろみ(ヒロミ)と目が合う

テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

今月の歌

ベランダの足場の向こう重く降る雨に消されてここだけ未来

たしか山、たしか道ありし昨日までをまぼろしにして雨降りしきる

どの宙にあるのかこの部屋 白い闇というものあるを教えたる雨

白い闇のむこうから来る思い出には楽しきことが削除されてる

冷蔵庫のとびら開けば今日はある明かりに卵ほっこりとある

茹でたての卵の殻をむくときに綿紗に拭う沐浴おもう

絹糸が迷わずに切る茹で卵 母の手底に美しくありにき

翼もつマンタのような雲がゆき街は戻り来 ふっきれ吾も

「いらんっ」て姪が言うから吊るされてジャンスカとジャンスカの思い出


*ジャンスカ=ジャンバースカート

テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

今日の歌

残すのは拾う人らにだけでいい泣き笑いつつ真夜に書くこと

テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

今日の歌

老後さんの木戸口までは紫陽花の咲く石段ありしばらくを咲く

テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

今日の歌

バス停からまっすぐ上がる毎日に「老後」という名の表札やさし

テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

今日の歌

いそぎんちゃくのごときジャスミンしとしとと三角コーナーを甘くしている

テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

今日の歌

そろそろ月出る頃なればぽつぽつと窓を灯して陽の色に家

テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

今日の歌

茹でたての卵の殻をむくときに綿紗に拭う沐浴おもう

テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

今日の歌

帰り来て夫がベルトを外す音、荷を引く馬の鈴音のごとし

白米をかきこむ夫の傍らに子の手が伸びて肉をひき去る




テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

今日の歌

翼もつマンタのような雲がゆくその爪痕に木々は根差せり

テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

今日の歌

たしか山、たしか道ありし昨日までをまぼろしにして雨音の町

テーマ : 自作短歌
ジャンル : 小説・文学

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